教育・研究

学科の教育・研究目標

脳死問題やAIDS問題に代表されるように、社会の発展につれて人々の健康問題は多様化し、複雑になってきました。一方、医学技術の進歩、生活水準の向上に伴って人々の寿命は延長し、限られた資源の中で高齢者の生活を充実させる諸方策も必要になってきています。新たな健康問題に対し、有効な解決策を立案・実践するには医生物学的知識はもとより、社会科学、人文科学など、極めて学際性の強い学問体系としての健康科学の確立とその領域での専門家の育成が望まれるようになりました。また、高度な先端医療技術や複雑な治療システムの発展の中で、人として、また生活者としての人間の療養生活を支え、一人一人の生活の質を守っていくためには、質の高い看護援助が必須です。それらを保証するための若い学問である看護学は、人間の健康と生活の質の向上をめざした応用性、実践性の高い学問領域であり、科学的な知識・技術と人間理解が求められます。このような社会的要請は高まる一方であり、全国的な看護教育の大学化もそれを反映したものと見てとることができます。このような中で、本学科には、次代の指導者を育成する教育・研究システムの確立が強く望まれています。
健康総合科学科の教育・研究目標は、このような背景のもとで、以下のように定めます。

  1. 人間を環境における生活体として理解し、
  2. 生活要因としての環境の解明と、
  3. 互いに交錯するそれらの関連性を健康生活の観点から総合的に把握し、
  4. 健康を守り高めるための生物的・社会的諸原則を解明し、
  5. それらの知識に基づいて、種々の生活条件下にある人々に、より健康な生活をもたらすべき各種施策を開発する。
  6. また、上記の知識と技術を土台として保健・看護サービスを提供する能力を育成する。

本学科は、看護・保健専門家養成のために昭和28年にわが国に初めて設置された衛生看護学科、昭和40年にこれを受けて発足した保健学科が平成4年に拡充改組されたものであり、同じく平成4年に医学部に誕生した大学院独立専攻・国際保健学とともに、わが国では他に類をみない健康科学そして看護学に関する総合的な「専門学部・大学院(School)」となっています。健康科学および看護学は、極めて広範な領域の知識体系の実践をめざして結合・再編成する若い学問であり、また、国際的な研究協力体制も今後一層強化されていくことが期待されています。実際、昭和63年に、本学科は各国1大学を原則として組織されているアジア・太平洋地域公衆衛生大学院協議会のメンバーとなり、現在に至っています。さらに、看護学領域においては、北米、北欧、東南アジア諸国を中心に活発な研究交流活動が行われています。