学科概要
学科長挨拶
現代社会における人類の生存はさまざまな科学によって支えられています。そのなかでも医学は,人類が病気を治療し,個人が長く生きることに大きな貢献をしてきました。産業革命以前は,ほとんどの社会で30年未満であった平均余命は,現在の日本では80年を超えています。現代社会における医学の射程は大きく拡がり,高齢化,社会保障,新興・再興感染症,生命倫理,地球環境問題,地域保健など,臨床医学だけでは対応するのが難しい領域が次々にうまれています。さらに,健康の問題は国境を越えて存在するようになり,グローバルヘルスの考え方が重要になりつつあります。健康総合科学科では,このような新しい医学の領域における研究をおこない,その成果を教育しています。人類の持続的な生存と幸福の実現を目指す研究と教育が健康総合科学科の使命であるといえるでしょう。
学科は大きく3つの専修に分かれています。環境生命科学専修には,人類生態学,人類遺伝学,生物医化学,母子保健学の研究室があり,人類の健康にかかわる自然科学の研究がおこなわれています。環境生命科学専修の研究室は国際保健学専攻の大学院も担当しており,グローバルな健康課題に対する貢献を目指しています。公共健康科学専修には,疫学・生物統計学,医療倫理学,保健社会学,精神保健学の研究室があり,人類の健康にかかわる社会医学領域の研究がおこなわれています。持続的な医療システムの設計,エビデンスに基づく治療/予防,医療倫理のルール作り,ストレスの少ない社会づくりなど,社会実装につながる研究がおこなわれているという特徴があります。看護科学専修は,看護師免許の受験資格を得ることのできるコースです。医療技術の発展にともない看護ケアを必要とする人類の数はかつてないほどのスピードで増加しています。この専修は,看護学領域における専門的な研究によって,より効率的で質の高い看護ケアシステムの創出に貢献しています。
東京大学1・2年生の皆さんへ
医学部健康総合科学科は,「健康」についての多様な領域の研究者が所属する日本で唯一の学科です。皆さんが日常生活で実感するように,「健康」は多くの人間にとっての大きな関心事であり,健康総合科学科の研究と教育には他の研究領域や社会から大きな期待がよせられているのを感じます。旧来の学問領域に歴史と実績に基づく良さがあるのはいうまでもありませんが,世の中のニーズに対応して成立した新しい領域にはダイナミズムと刺激があふれています。東京大学の駒場の学生さんには,健康総合科学科を進学選択の有力候補として考え,その研究と教育について知っていただきたいと思っています。わたしたち教員だけでなく,さまざまな領域で活躍する卒業生に話をきいてみるのもよいかもしれません。豊かな領域と将来性にきっと驚くことでしょう。皆さんと一緒に勉強できることを楽しみにしています。
健康総合科学科長
梅崎 昌裕