学科生の声

卒業生の声

2004年度卒業
理科二類出身 
西

企業から、日本の健康に働きかける。

西内さんは、本学科卒業後に健康科学・看護学専攻 生物統計学分野(現・公共健康医学専攻 生物統計学分野)で修士号を取得後、東大の医療コミュニケーション学分野(公共健康医学専攻)にて助教に着任。2014年より、株式会社データビークルの取締役として活躍されています。著書「統計学が最強の学問である」(ダイヤモンド社,2013)など。

この学科を選んだ理由

教養学部理科二類に在籍時は、離散数学に興味があったんです。整数や自然数の世界ですね。でも、その分野で一生仕事をしていくことには、不安がありました。

ではそれ以外に何がよいかと考えてみると、「人間とは何か?」というところにはたいへん興味がありました。ただ、脳科学や神経科学、遺伝学などのミクロな視点からでは、本当に興味があるところの人間全体がとらえられるのか、正直あまりイメージ出来ませんでした。そこで、文系の分野に目を向けてみると、心理学、社会学、経済学などが面白いと感じたんです。これらの全ての分野に共通して、統計学を使うことで、人間というソフトな対象を科学にできるではないかと、統計学を学べる学科を探しました。統計学はもちろん教養学部や経済学部でも勉強できますが、最も人間にフォーカスを当てられる、医学部の生物統計学に魅力を感じたんです。そこで、本学科への進学を決めました。

今の仕事と、学科で学んだことのつながり

今は、株式会社データビークルで、企業向けの分析用ソフトウェアを開発しています。企業の中には多くのデータが蓄積されていますが、データをどのように分析したらよいのか、悩んでいる人は多いんですよ。

学科で学んだことと今の仕事での関連については、もちろん、所属していた生物統計学教室で学んだことは直接活きていますね。統計学以外の講義では、「音響認知」が意外と役に立ちました。※1 耳に入ってきた音が、脳で認知される仕組みなどを勉強したんです。今、人工知能や機械学習がブームになっていますが、実際の仕事でも音声データを扱う機会があり、その講義の内容が応用できました。

また、社会調査実習で、フィールドに出てインタビューを行い、分析して報告書まで作成した経験も、今の仕事に役立っていると感じます。

自分自身の今後の展望

今、健康にとって悪影響を与える要素については、かなり研究が進んでいます。例えば、たばこが癌のリスクをあげることは、今や明らかですよね。でも、どうしてたばこを吸う人は、いなくならないのでしょうか? それは、正しい知識を伝えるだけで行動が変わるほど人間は単純ではないからです。しかし、だからといって行動が変えられないということはなく、ちょっとした心理や環境の変化によって健康に関する様々な行動を変えられるということが、統計学によって実証されています。健康行動、あるいは生活習慣の改善は行政としても重要なテーマなはずですが行政はまだまだあまりこうした科学的なアプローチが十分ではありません。

ここで政治的な振る舞いを身につけて直接行政に働きかける、というのも一つのやり方ですが、自分にあまり向いているとは思えません。そこで、むしろ社会全体に働きかけたいと考えて、今の仕事をしています。日本はアメリカなどと比べて、格差が小さく、仕事の現場レベルでデータを使って、品質や生産性を改善してきた歴史があります。トヨタ自動車などがいい例です。企業に蓄積されたデータを現場の人が活用し、自分で自分の仕事を改善していけるように支援すれば、何につけても、データを活用して物事を判断する力が付く。ひいては、国民のヘルスリテラシーの向上につながると思うんです。

進学を考えている(悩んでいる)人へのメッセージ

脚光を浴びていない分野にこそ、チャンスがあります。

ブームになっている分野は、すでにある程度のブレイクスルーを経過してきているものです。裏を返せば、まだブームの来ていない分野は、あなたがブレイクスルーを起こせる可能性があります。本学科にはたくさんのエキサイティングな分野があります。何かやりたいことがあれば、ぜひ挑戦してみることをお勧めします。

※1 「音響認知」の講義は現在は行われていません。

(インタビュー:2016年 所属・学歴等の内容はインタビュー当時のものです。)