The University oy Tokyo
各界で活躍する本学科卒業生が、在学生によるインタビューに答えます

第5回:市川衛さん
平成11年度卒業
NHK 科学環境番組部
第4回:小西祥子さん
平成13年度卒業
東京大学大学院
第3回:松本和史さん
平成10年度卒業
東京大学医科研附属病院
第2回:宮川卓さん
平成9年度卒業
東京大学大学院
第1回:耒本亜希子さん
平成6年度卒業
(株)日立製作所
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2010.5.4updated

市川 衛(いちかわ まもる)さん
NHK科学環境番組部
ディレクター
平成11年度卒業、暁星高校出身
健康科学コース卒業(学部卒)後、平成12年にNHK入局。 ディレクターとして、医療系・科学系を中心に様々な番組の制作を行う。 現在はNHK総合「ためしてガッテン」(水曜夜8時)を担当。

Q1.市川さんはNHKでディレクターのお仕事をされているとのことですが、ディレクターとはどのようなお仕事ですか。
Q2.テレビで扱う医療系の話題を選別されているとのことですが、そのトピック選びはとても重要であると感じます。どのような方法で情報収集をされているのですか。
Q3.学科で学んだことは今の仕事にどのように活かされていますか。
Q4.市川さんがマスコミを志したきっかけや、そのやりがいを教えてください。
Q5.今後はどのような番組作りにとりくんでいきたいと考えていますか。
Q6.では次に市川さんの学生生活についてお聞きします。この学科に進学を決めた理由は何ですか。
Q7.どのような大学生活を送っていましたか。
Q8.この学科の魅力は何でしょうか?
最後にこの学科で学んでいる学生、また進学を考えている駒場生にメッセージをお願いします。

市川さんはNHKでディレクターのお仕事をされているとのことですが、ディレクターとはどのようなお仕事ですか。
  一言でいえば「監督」です。取材を通じて世の中に問うべきテーマを探り、企画書の形にまとめ、採用されれば予算内で撮影等の作業を進めていきます。ゴールデンの番組を担当しているので、視聴率で他局に負けないよう、演出面での工夫も求められます。また特に医療分野のトピックを扱う時などは、内容の正確さを担保するため国内外の論文の読み込みや、専門家の取材などに多くの時間を割きます。こうした「勉強」も、大切な仕事です。

テレビで扱う医療系の話題を選別されているとのことですが、そのトピック選びはとても重要であると感じます。どのような方法で情報収集をされているのですか。
  今までに、認知症・介護・薬物の副作用問題・呼吸器や消化器系の病気など、様々なテーマを扱ってきました。テーマを選ぶ際にまず重視するのは、医療系のセミナーや学会に通い、専門家の話を直接聞くことです。また文献検索も重要で、東大の医学部図書館にもよく通っています。国内海外を問わず多くの文献がそろっているので、新しいトピックを探すのに重宝します。こうした取材を通じて明らかになってきたテーマに、個人的な経験や関心を付加して「自分なりの切り口」を加えたものが企画になります。社会に出ると情報収集も勉強も、能動的に自分の足を動かしていかないと、何も得られないのです。
医学部図書館は卒業後も大きな役割を持っているのですね。学科で学んだことは今の仕事にどのように活かされていますか。
  学科で学んだ医学系基礎知識はとても役に立っています。番組づくり全体を通じて専門家へのヒアリングは欠かせないのですが、その際に医学用語や解剖学的な知識(骨・内臓の名称など)といった「共通の基盤」があると、取材がスムーズに進むからです。また、医学の論文を読む際にどうしても必要な統計学の知識を、大橋先生の授業などで多少なりとも身につけられたことは、大変役に立っています。今から考えると、学生時代にもっと勉強していれば、入社後の早いうちから効率よく仕事ができたのにと思います(笑)。座っているだけで知識が得られる学生というのは、実はとても有り難い立場なんだなと・・・。
市川さんがマスコミを志したきっかけや、そのやりがいを教えてください。
  きっかけは単純で、東大の就職支援センターでNHKの募集案内を見かけたことです。最初は気軽な気持ちでしたが、就職活動をする中で、自分の問題意識や世の中に対して伝えたいことを主張できるマスコミの仕事に強い興味を感じていきました。例えば先日、ガッテンで「介護」に関する特集番組を制作しましたが、それは昨今の報道の中で、「介護=悲惨」というイメージだけを表面的に取り上げる「お涙頂戴」番組ばかりが目につき、それが介護者一人一人はもちろん、国の政策にまで悪い影響を及ぼしているのではないか、という問題意識があったためです。そこで番組では、「要介護者=何もできない人」と捉えるのではなく、「できることは自分でやってもらおう」という姿勢を介護者がとることで、要介護者にも介護者にも幸せな結果が生まれる場合がある、ということをメインテーマに据えました。その結果、放送後「介護に希望が生まれた」など、本当に多くの視聴者から反響を頂くことができました。「なんか、世の中間違っているんじゃ・・・?」と思ったとき、単に「思う」だけでなく、それを問題提起し、少なからぬ人に伝え、ときには本当に「変化」が起きてしまうことさえある。これが私にとって、最高のやりがいになっています。
今後はどのような番組作りにとりくんでいきたいと考えていますか。
  私はいま、バラエティ色の強い「ためしてガッテン」を制作していますが、時々「クローズアップ現代」など報道系の番組もやらせてもらっています。こうした報道系の番組には、バラエティとはまた違ったやりがいがあるからです。自分で企画書を書き、採用されればこうしたイレギュラーな仕事をやらせてもらえるのも、TV局の良いところだと思います。 真摯な思いや問題意識をもってテーマに向かっていく姿勢を忘れないようにしながら、いまも自分なりに複数のテーマを考え、地道に取材を続けています。いつかは「NHKスペシャル」などの大きな番組で具現化する日が来れば、いいのですが・・・。
では次に市川さんの学生生活についてお聞きします。この学科に進学を決めた理由は何ですか。
  正直を申し上げると、「なんとなく・・・」というのが実際のところです。でも子どものころから、人間の体、特に脳に興味を持っていました。「人間の体について詳しくなれる」というイメージがあったことが、進学を決めた理由かもしれません。でもよく考えてみると、マジメな理由は4割で、あとの6割は「女性が多かったから」ということかも(笑)。当時は編入制度があって、女性も多かったし・・・。ま、結局、彼女は出来ませんでしたが・・・
どのような大学生活を送っていましたか。
  正直、良い学生だったとは言い難いと思います。ボランティアサークルの「駒場子ども会」の会長をやっていて、授業より、その活動を中心にしていましたね(笑)駒場子ども会は、主に子どもを週末に遊びに連れていくという活動をしています。年に1回子ども100人以上をキャンプに連れて行ったりもしました。そうした「イベントの企画・運営」などの経験は、就職活動では役にたったと思います。とはいっても、いま学生時代に戻れるならば、もっともっと真面目に授業を受けたいなあ・・・と思います。その点が、心残りです。
この学科の魅力は何でしょうか?
  医療に関する知識を持ちながら、医師ほどまでは専門的につきつめないという意味で、医療界と一般の人との架け橋になれることだと思います。また、学科で学べることが幅広いため、色々なことができることだと思います。さらに見逃せないのが、研究ポストが十分にあること。看護学コースに進めば、一生食べていける資格もとれます。
   最近急に感じるようになったのですが、番組のために第一線で活躍する医療関係の先生に取材しに行くと、健康科学・看護学科の卒業生の方々にお会いする機会が増えました。健看の卒業生が医療の第一線で活躍し、社会と医療を結ぶ様々な役割を担っていくことが求められ、実際にそうした変化が起きてきているのだと感じます。
最後にこの学科で学んでいる学生、また進学を考えている駒場生にメッセージをお願いします。
  まず学科生に対してですが・・・、大学院への進学を考える人が多いようですが、院だけが1つの選択肢ではないのかもしれません。例えば院へ行くことを前提に、「試しに就職活動してみてみよう」くらいの軽い気持ちでも良いので、一度経験することをオススメします。就活では自分の能力や今までの勉強が、「商品」としてどれだけ使えるかを企業に対してプレゼンすることが求められます。その経験を通じて、院で何を専門とすればいいのか、院にいったあとのキャリアパスとしてどのような形をとりたいのか、などが見えてくることもあるでしょう。幅広い視点を持って、進路を選択してください。
  駒場生のみなさんに対しては・・・、「健康科学・看護学(現 健康総合科学)に来ないと、もったいないよ!」ということでしょうか。研究職を考えた場合、看護系大学が増えたこともあり、ポストが空いている状態はまだ続いていると思います。また就職を考えた場合も、看護師・保健師はもちろん、それらの資格を生かした治験コーディネーター・臓器移植コーディネーターなど「普通の人ではなれない」やりがいのある職業を目指すこともできます。いま成長が著しい病院経営コンサルの分野など、活躍の場はどんどん広がっていくと思いますよ。

2009年5月  聞き手:健康科学・看護学科4年 青山朋未、佐々木那津